東日本大震災復興支援麻雀大会 フェニックスオープン

フェニックスオープン決勝 観戦記

【フェニックスオープン決勝スコア】
順位
選手名
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
1
吉田 惇
93.9
-47.8
53.8
48.5
-18.2
57.6
2
多田 ひかり
81.9
59.9
7.8
6.1
53.4
-45.3
3
木村 博
-37.7
-18.1
-14.6
-14.4
4.1
5.3
4
真希 夏生
-141.1
4.0
-48.0
-40.2
-39.3
-17.6

 

 

 

<第1回戦>(真希→吉田→多田→木村) (※文中敬称略)

東1局、4巡目に放たれたにまず動いたのは、一般予選から勝ち上がりの木村博である。
平素からあちこちのフリー雀荘を主戦場にしているという木村は、
恰幅の良さと相まって、非常に堂々とした麻雀を打つ印象を周囲に与えていた。
木村(北家)
 ポン ドラ

大舞台に緊張する様子もなく、こうした動きを初戦から臆せず入れられるのは頼もしい。
そして起家の真希夏生が、7巡目にすんなり聴牌を入れてリーチ。

真希(東家)
 ドラ

真希はプロ歴も1年ほどの新人であるが、合格者のほとんどが女性という異例の試験だった9期後期生の中、
まずはタイトル戦の決勝進出という結果を出したことで、これからも活躍が期待される女流選手の一人となるだろう。
このリーチを受け、現物で迂回しながら聴牌を入れていた木村も、終盤で無筋を引いて丁寧に降りる。
真希の一人聴牌と、静かなスタートである。

東1局1本場、11巡目に多田ひかり。
多田(西家)
 ツモ ドラ
で磐石のリーチ。
6期後期生と、キャリアにして4年真希より先輩の多田。協会の選手で勝ち残ったのは、真希とこの多田の、二人の女流プロである。
タイトル戦の決勝は多田も初めてだが、競技活動の経験は流石に軍配が上がるだろう。
フリー雀荘のゲストも長年やっているので、勝負強さに関しても定評がある。
個人的にはやはり優勝に絡んでくる選手だろうと思っていた。
ほどなくをツモり、裏も乗って満貫の和了り。
 ツモ ドラ 裏ドラ

そして次局も、あっさり9巡目リーチを一発でツモっての満貫。
多田(南家)
 ツモ(一発) ドラ 裏ドラ
これで多田は41800のダントツ。幸先のいい滑り出しである。

東3局は、ここまで出番のなかった吉田惇に配牌ドラ暗刻。
吉田(北家)
 ドラ

東日本大震災の復興支援というコンセプトで開催したこのタイトル戦は、
大会趣旨に賛同を頂いた企業や個人に、様々な形での援助を賜った。
この場を借りて、協力して下さった皆様には厚く御礼を申し上げたい。
吉田はそのスポンサー企業の一社、サミーネットワークスの協賛シード枠での出場から、見事決勝まで勝ち上がったのである。
いつもは同僚とセットを打っている吉田、フリー雀荘の経験はないが、
セットのルールが赤入りの割れ目ということで、放銃の怖さについては誰よりも熟知している。
穏やかな物腰と同じく、一歩引いた控えめな打ち筋がここまで印象的であった。
しかし5巡目に真希から先制でリーチが入り、ここは勝負を余儀なくされる吉田。
通りそうな牌を選びながら恐る恐る進めて行くが、
吉田(北家)
 チー ドラ
10巡目にここから打で真希に放銃。
真希(西家)
 ロン ドラ 裏ドラ
1300だが、吉田にとっては非常に残念なところ。

東4局、東家木村。
強者の親番はなかなか落ちないというが、この日一番長く親権をキープしていたのは木村である。
平場の先制ピンフリーチの流局後、1本場でこの形。
木村(東家)
 ツモ ドラ
8巡目にここからカン待ちの即リーチ。
リーチのみだが、親の先制なら勿論ここは他家を押さえつける一手であろう。
これに終盤、役無し愚形聴牌で安牌のない真希が、渋々のツモ切りの放銃となる。
真希(南家)
 ツモ ドラ

木村の河は、



である。ドラがであるだけに、筋のも切りにくい。一概にこの放銃は責められないだろう。

連荘する木村だが、東4局2本場はダントツの多田に阻まれる。
多田(北家)
 ドラ
場にすでにが3枚打たれていたが、すんなり4枚目をチーできて、2000は2600の和了り。
トップ目でこういうかわし手があっさり成就できれば、試合運びはずいぶんと楽になる。

南1局1本場、序盤吉田にまた役牌のドラが暗刻で入るも、
吉田(南家)
 ドラ
吉田の打ちが、下家で仕掛けを入れていた多田につかまる。
多田(西家)
 ロン チー ポン

吉田は苦しいが、トップ目でこうした局を回す仕掛けを入れられる多田も強い。
初戦はこのまま多田が逃げ切り、まずは1勝を飾った。

多田+59.9 真希+4.0 木村▲18.1 吉田▲47.8 (供託2.0)

 

<第2回戦>(吉田→多田→真希→木村)

全員がほぼ、こういうタイトル戦の決勝の舞台は初めてという戦い。
それぞれがかつてないほどの緊張と興奮を抱えていることは想像に難くないが、まずは先行した選手を止めることが三者の共通認識であっただろう。
しかし、その思いを易々と打ち砕くのが今日の多田であった。
多田(南家)
 ツモ(一発) ドラ 裏ドラ
こういう人を食ったようなリーチと和了りを堂々とやってくれるところが、多田の強みである。

次局も親番で、多田九種から悠々の国士。
12巡目にはここまで持ってくる。
多田(東家)
 ドラ

しかしここは、じっと息を殺していた吉田が真希からの和了りで潰す。
吉田(北家)
 ロン ドラ

我慢を重ねて来た吉田は、これが今日初の和了り。
初戦ラスの後、いきなり多田の満貫を親被りしての苦しいスタートだっただけに、安堵の表情である。

東3局1本場、まずは8巡目に多田がイーシャンテン。
多田(北家)
 ドラ
11巡目のもツモ切って、チーテンの構えは崩さない。
多田はこういう局を回す手格好を上手く扱っており、やはり毎日のゲストプロの仕事で実戦慣れしている感がある。
13巡目に、2つ目の仕掛けを入れた木村が聴牌一番乗り。
木村(南家)
 ポン ポン ドラ
同巡、吉田の切ったを想定通りに鳴いて、多田も追いつく。
多田(北家)
 チー ドラ
そして木村、生牌のドラを掴んで少考。
多田の仕掛けはあるが、ここは親番もまだ2回あるし、離れた3着目ということで勝負のツモ切り。
これに声を掛けたのは、静かなる男吉田である。
吉田(西家)
 ポン ドラ
で、当然の聴牌。
道中、1枚持ちのドラを切ればイーシャンテンになる機会はあったのだが、吉田ここは丁寧に重ねてポンテン出来る手に。
木村がすぐにを掴んでしまい、吉田がこの満貫で嬉しいトップ目に立つ。

勝負の結果であるが、これで木村はラス目に。
しかし、多少の放銃は親番で連荘して回復させるのが木村の持ち味なのであろう。
東4局、木村が8巡目にこのリーチ。
 ドラ
ほどなくをツモって2600オールである。

東4局1本場は木村と真希の二軒リーチが流局しての二人聴牌。

続いて2本場は、
多田(西家)
 ポン ポン ドラ

多田のこの仕掛けを受け、14巡目の木村、
木村(東家)
 ドラ
ここに上家から出たを、叩いて打とする。
単騎で、木村親権を死守。

3本場も木村、悠々と仕掛けてこの形。
木村(東家)
 加カン ポン ドラ

木村の大きな体躯でこの親仕掛けを見せられては、やはり並々ならぬ迫力を感じてしまう。
南家吉田がこの回またドラの暗刻で強いと思われたが、ここは降り。
親の落ちない木村、ついに4本場に突入である。

東4局4本場、供託が2本転がっている。
やっと先手を取れた吉田、9巡目にリーチと打って出た。
吉田(南家)
 ドラ

それを受けての多田、10巡目にこうである。
多田(西家)
 ツモ ドラ

吉田の捨て牌は、


となっている。吉田はリーチ棒を出して28400、多田は29900。
ここは勿論吉田に和了られたくない局面だが、初戦トップのせいか多田の腰が引けてしまう。を押せずに、を落とす。
すぐに北家真希から現物のが打たれる。
ここは現張りに出来ただけに、多田も微妙な心境であろうが、多田としては初戦ラスの吉田に喧嘩を売りたくもなかったのだろう。
多田がを取りこぼした瞬間に、吉田がをツモりあげる。
吉田(南家)
 ツモ ドラ 裏ドラ
1300・2600で供託もさらい、吉田が抜け出す。

南4局、点棒状況は東家から、木村26400、吉田34800、多田25800、真希13000である。
真希はここまで全く手が入っておらず、オーラスは三者の着順がどう動くかに注目が集まった。
12巡目、真希が2枚目のを叩いて聴牌。
真希(北家)
 ポン ドラ
対々に変われば、満貫直撃で着順のアップは見込める。
そこへ14巡目、多田からリーチが入る。
多田(西家)
 ドラ
これを受け、一向にテンパらない木村は撤退。闇テンだった吉田も当然の降り。
一人聴牌で押していた真希であったが、多田がツモ切ったを見逃す。確かに和了ってもラスのままだが・・・。
脇が降りてしまった以上、多田が聴牌料で2着浮上はほぼ確定してしまう。
開局時にそれぞれが考えたように、初戦トップの多田を3着で終了させられるなら、ここは真希が絶対に和了らなければならない。
本人も猛省したであろうし、これからの選手である真希が同じ轍を踏むことはないと期待するが、今後の糧とするには少々手痛い代償になってしまった。

吉田+53.8 多田+7.8 木村▲14.4 真希▲48.0 (供託1.0)

(2回戦終了時)
多田 +67.7
吉田 +6.0
木村 ▲32.7
真希 ▲44.0
供託3.0

 

<第3回戦>(吉田→真希→木村→多田)

ここまで3着3着とあと一歩及ばない木村、東1局の5巡目にリーチ。
木村(西家)
 ドラ
果敢に食い下がる多田の聴牌に引き勝ち、15巡目に裏ドラで満貫ツモ。

東3局、今度こそのトップを目論む木村。安手だがまた親で積み、ここからの連荘を図るが北家の真希が阻む。
真希(北家)
 ツモ ドラ
ここから打
直後と引いてのこのリーチ。
 ドラ

捨て牌は、

である。
これに吉田、イーシャンテンからで飛び込む。裏は乗らずの6400は6700。
守備型の吉田もこれは致し方ない。

木村、真希、多田、吉田の並びのまま局が進み、南場、また終わらない木村の親番である。
南3局2本場、終盤に東家木村がをチー、南家多田がのポンを入れる。
真希(北家)
 ドラ
真希もこの聴牌を入れていたが、が場枯れ。そして17巡目に生牌のドラを持って来てしまい、
二人の仕掛けを見て少考の末降り。
流石にここで打てる牌ではないが、無情にも最後のツモはであった。
木村はタンヤオの聴牌、吉田が二丁使いのチートイツ聴牌で、真希にとっては辛いノーテン。
しかし、真希の苦難はこれにとどまらなかった。

南3局3本場開始時点では、東家から木村36500、多田19500、吉田15300、真希27700。
ここで9巡目に吉田が突如リーチ。一発で和了り牌を引き寄せる。
吉田(西家)
 ツモ(一発) ドラ 裏ドラ

この半荘ほとんど参戦の機会がなかっただけに、青天の霹靂とも言える跳満の和了りである。
虎視眈々とチャンスを狙い続けた吉田にやっと大物手が入り、連荘力のある木村にとっては完全に裏目となった展開である。

南4局、親の多田がダンラス、木村と吉田が30200持ちでなんと同点。
24400の真希にもまだ十分トップの目はあったのだが・・・。
多田(東家)
 ツモ ドラ
2巡目の多田、切りで役無しのダマテン。
次巡にツモドラ
 ツモ ドラ
ここで打として聴牌を外す。
 ドラ
でシャンポン変化、で両面以上への変化があるのだから、これは落ち着きのある一手だ。
首尾よく8巡目にツモでリーチ。
 ドラ
裏はなかったが、一発でツモって堂々の4000オールである。

これで点棒状況は、多田が27200、吉田と木村が26200、真希が20400となってしまった。
和了り競争の南4局1本場は、吉田が4巡目にポンテンを入れて終盤にツモ和了り。
吉田(南家)
 ツモ ポン ドラ
真希はなんとラスで終了、吉田は初戦ラスからの連勝でかなり多田に追いついてきた。

吉田+48.5 多田+6.1 木村▲14.4 真希▲40.2

(3回戦終了時)
多田 +73.8
吉田 +54.5
木村 ▲47.1
真希 ▲84.2
供託3.0

 

<第4回戦>(多田→吉田→真希→木村)

残るはたった2半荘である。
木村と真希は、もうここでトップを取らないとかなり厳しい。逆に多田と吉田は、ここでトップを取った方が大きく優勝に近づく。

東4局2本場、親の木村に多田が飛び込んで、2000は2600。
木村(東家)
 ロン ドラ

続く東4局3本場は、10巡目にまず西家吉田がリーチ。
吉田(西家)
 ドラ

捨て牌は

次巡追いついた木村、吉田の現張りだが果敢にリーチ。
木村(東家)
 ドラ

こちらの捨て牌は、

表示牌含みで木村の方が枚数的には若干厳しかったが、
多田(南家)
 ツモ ドラ
多田がここから不用意にで親に放銃。
木村(東家)
 ロン ドラ 裏ドラ
裏は乗らずとも、9600は10500。多田は、木村の宣言牌と、後に通ったが安全牌なだけに、これは痛恨の失着であった。
親を容易に手放さない木村はやはり軽視できない。これで多田とのトップラスが現実的になり、いよいよ面白くなってきた。

南2局2本場、西家木村が41100とダントツ。吉田26800、真希20700と続いて、多田が11400持ち。
真希(南家)
 ドラ
7巡目に真希がこのリーチ。ただ直前に高めのが3枚枯れて、なんとも感触の悪いところ。
ラスは既に木村の手に組み込まれていて、真希の和了りはまず苦しい。
全員が降りての海底間際、ここで事件が起きる。
17巡目、ここまできっちり降りて現物を並べていた木村が、最終手番で他に安全牌があるのにを放ってしまう。
リーチ直前に切られていたので、まず勘違いの放銃であるのだろうが、真希も驚いた様子で手牌を倒す。
この8000移動で、真希にも十分チャンスが生まれてきた。

28700持ちの真希、親の4巡目である。
真希(東家)
 ツモ ドラ
先ほどの和了りの余勢を駆って、真希がドラ切りの先制リーチ。

流石にこれは固い。
観戦者誰もが、真希のトップ浮上を予想していたはずだ。
北家吉田が、このリーチ一発目にドラのを無論合わせる。
「ポン!」
多田(西家)
 ポン ドラ
なんとリーチの同巡にを重ねていた多田。
これを叩いて、現物のと行かず、真っ向勝負の切り。
無筋を切り飛ばしながら、11巡目に南家木村からをチーして真希に追いついた。
多田(西家)
 チー ポン ドラ

フェニックスオープンの名の如く、困難な状況からも不屈の闘志で立ち上がる気概を多田は確かに持っていた。
12巡目には木村も追いついて多田と同聴でリーチ。
木村(南家)
 ドラ

この三人聴牌を制したのは、不死鳥多田。
多田(西家)
 ツモ チー ポン ドラ

リーチ棒も2本さらっての、大きな満貫ツモ。

オーラスを迎え、点棒状況は東家から、木村30100、多田21400、吉田24800、真希23700。
多田はまだラス目だが、こうなるともう分からない。
三者としては、ここまでトータルトップの多田はどうしてもラスに沈めておきたいところ。
しかし3巡目に多田、意気揚々と追撃のリーチ棒を投げる。
多田(南家)
 ドラ
ドラ二丁の鉄板チートイツである。
11400持ちのラス前から、苦境を物ともせず多田は天高く羽ばたいていった。
これをツモりあげて3000・6000とし、多田にとって大きな大きなトップ。

多田+53.4 木村+4.1 吉田▲18.2 真希▲39.3

(4回戦終了時)
多田 +127.2
吉田 +36.3
木村 ▲43.0
真希 ▲123.5
供託3.0

 

<最終戦>(吉田→木村→多田→真希)

こうなると、多田の優勝の可能性が相当高い。
一番近い吉田でさえ、90.9ポイントの差がある。トップラスでかつ10900点差以上をつけられなければよい。
木村とのトップラスなら約9万点以上、真希なら約17万点以上だ。

東2局1本場、多田が以下の捨て牌でリーチ。


多田(南家)
 ドラ

トータルトップでも、こういう局面で日和らないのが多田である。
ペンチャンとは言え、確かにリーチ時点で山にも2枚残り。
攻めの姿勢をあくまで崩さず、まずは点数的にもリードを図るのが重要と考えたのだろう。

三者が降りて流局し、迎えた親番でも多田。
多田(東家)
 ドラ
12巡目にこのリーチ。
あくまで攻めるが、これも流局といまいち加点できない。

そして木村の1300・2600を挟んで真希の親番。
真希(東家)
 ロン ドラ

このメンホンに南家吉田のリーチ宣言牌が刺さり、多田にとっては非常に有利な展開に。
ここまでで点棒状況は、東家から真希31900、吉田9900、木村34600、多田23600である。
多田は、真希か木村がトップならまず問題はない。
唯一現実的な逆転の目があった吉田は、これでかなり苦しくなった。

続く東4局1本場も、
吉田(南家)
 ドラ
この6巡目満貫を吉田は、多田から討ち取らんと静かに構えていたが、ツモ切ったが真希の仮聴に当たってしまう。
真希(東家)
 ロン ドラ

これで真希と木村が34600の同点トップ目。吉田は7200と大きく離される。

吉田はかなり厳しい。しかしそれでも吉田は、静かに歯を食いしばりながら真摯に摸打を繰り返す。
見知らぬ面子との麻雀自体が不慣れな中、丁寧に手を作り、立ち向かっていく。
流局を挟んで南1局の3本場、吉田最後の親番である。
吉田(東家)
 ドラ
9巡目にこのリーチ。吉田は三色の手作りが多く、3回戦目もカンの三色を一発でツモってラス目から復活してきた。
ここもを引けば文句なしの手で、絶望的な状況からの起死回生を図る。
これに安牌のない木村、の対子落としで放銃。
吉田(東家)
 リーチロン ドラ 裏ドラ
安めの和了りではあるが、裏ドラが乗ってまずは12000。

南1局4本場、さらに吉田が13巡目にリーチ。
吉田(東家)
 ドラ

現在真希以外の三者がほぼ点棒が一直線であるだけに、吉田はどうしてももう一和了り欲しいところであったが、
これは木村の追いかけリーチに潰された。
木村(南家)
 ツモ ドラ 裏ドラ
親被りでまたラス目の吉田。親もなくいよいよ苦しいか。

南2局、奇跡に賭ける木村の親番。ここでも木村、先制リーチでまず全員を降ろし、まずは1本場。
東家から、木村31600、多田19400、真希30400、吉田17600という状況。
12巡目、木村が横に曲げたを、多田が上気した声で討ち取る。
多田(南家)
 ロン ドラ

この半荘、多田やっとの初和了りで南3局となる。
しかし――。

リードしたときに局を消化する技術に長けていた多田であり、今日ここまでも、うまくかわし手で他家の親を捌いていた。
が、この最終戦ラス前を迎え、後は多田と真希の親番を残すのみ。
現在、東家多田から21700、真希30400、吉田17600、木村30300である。
この点棒状況で、吉田がここから多田とのトップラスを作るのは、そう難しいことではない。跳満クラスのツモ和了り1回で足りる。
ということは、多田は木村のリーチを静観し、まずは吉田がどう足掻いてもトップを取れない状況を作るべきではなかっただろうか。
多田にとって第一に避けなければならないのは、まず吉田のトップなのである。木村には大きくリードしてもらってそう問題はない。

吉田(西家)
 ドラ

観戦者の懸念通り、吉田はこの配牌をまた三色に仕上げ、8巡目にこのリーチ。
 ドラ
苦しい位置から闘志の種火を残して丹念に手を進め続けた吉田、13巡目に高めのを引き当てた。
裏は乗らず。2000・4000で多田に肉迫。

南4局。
南家吉田は25600で、2800点上の真希と2700点上の木村をまくる必要があり、
ラス目の北家多田とは現在7900点差で、あと3000点以上開かせなければいけない。
吉田は700・1300ツモか3200以上の出和了り、または一人聴牌で優勝となる。
ノーテンの許されない多田、運命の配牌。
多田(北家)
 ドラ

かたや吉田、
吉田(南家)
 ドラ

多田は絶望的に厳しい。
7巡目、
吉田(南家)
 ツモ ドラ

ここまで進んだ吉田の打に、多田が声をかける。
多田(北家)
 ポン ドラ

叩いて打
続いてポン、加カンと、猛然と足掻く。
多田(北家)
 ポン 加カン ドラ

聴牌すら厳しいと見た多田、この必死の形聴狙いには、見ている側皆の胸が熱くなっただろう。

14巡目にやっと吉田が聴牌。
吉田(南家)
 ドラ

ここから必死でツモ切りを繰り返していく。
18巡目、多田は海底の残りツモ1回だがまだこの形。
多田(北家)
 ポン 加カン ドラ

最後の牌で聴牌できるかどうかというところ。
脇二人はノーテンで、このまま吉田が和了れず、海底で聴牌すれば多田の逃げ切りだ。

19巡目、吉田はこれが最後のツモ。
ここで――。

吉田(南家)
 ツモ ドラ

震える右手で先刻と同じ、三色高めのを引き寄せ、第1回フェニックスオープンは決着。

燃え尽きるまで健闘した多田が、同じく苦境でも最後まで諦めなかった吉田に「ハイ!」と点棒を渡した。
涙を堪えての、精一杯の清々しさが印象的だった。
『フェニックスオープン』の名の通り、
それぞれが苦難に立ち向かって前へ進み続けた、素晴らしい戦いぶりであった。



「このように自分の大好きな麻雀を通じて、今回の大震災の復興の手助けが出来たこと、
また社会貢献を考えるきっかけを作ってくれたことに、本当に感謝しています。
自分には過ぎた結果ですが、この優勝は一生の思い出になりました。本当にみなさん有難うございました」

優勝コメントで、吉田はこのように嬉しい言葉を残してくれている。
終始穏やかで、見る者を安心させる優しい空気をまとわせたその男は、
困難に立ち上がる力強く暖かい炎を、確かにその内に燃やしていた。

第1回フェニックスオープン優勝は、まさしくそのタイトルにふさわしい戦いを見せてくれた吉田惇さんでした。
本当におめでとうございます!


 

(文・須田 良規)

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